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2017.01.22 Sunday

愛を乞うひと。

あれはたしか小学校3,4年の頃
図工の工作の授業でパペット人形を作った。
子供が紙粘土で顔部分を作り
親がパペットの服の部分を作るという親子競作だった。
当時仕事を持っていた母親は忙しく
学校から渡されたプリントを見ながら夜遅く作り始めた。
子育てに手間をかける人ではなかったから
その背中から面倒だと思っている気配が伝わってきた。
給食袋を作った残りの赤いチェックのハギレ布を使って
なんの飾り気もない、質素な服を着た人形が出来上がった。


その人形が美術展に出品されて賞をとった。
壇上に上がって校長先生から大きな賞状をもらった。
そして賞をとったいくつかの作品と一緒に
ガラスケースの中に展示された。
他の作品の人形の服は
まるでリカちゃん人形のドレスみたいに凝っていて
美しいフリルの襟やお姫さまみたな段々のレース、
手縫いの刺繍やきらきら光るボタンで豪華に作られていた。
でも飾りひとつない質素な赤いチェックの服を着た私の人形は金賞で
いちばん目立つセンターにうやうやしく展示されてた。
それを見た母親が真っ赤になって言った。
「親に恥かかせて」
言葉尻に忌々しさにあふれていた。
ひとことの誉め言葉もなかった。
年度末に人形が返却されると
母はそれをゴミ箱へ放り投げた。


子供だった私は母がどうして怒っているのか
全然わからなかった。
だから自分が悪いんだな、って思った。
目立つことが嫌いで外聞を人一倍気にする人だったから
予期せず自分の作ったものが大勢の人の目に晒されて
とてもショックだったんだろうと今なら思う。
でも私は
立派な賞状よりも、多くの大人の賞賛よりも
母に誉めてもらいたかった。


あの頃のちいさなのわたしに言ってあげたい。
あなたは何も悪くなかったんだよーって。
あなたの人形はとても可愛かったよって。
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私的できごと | permalink | comments(2)

この記事に対するコメント

  • 涙出ました。

    ちゃーこ | 2017/01/22 1:41 PM
  • >ちゃーこさん
    ありがとう。

    morimori | 2017/01/23 8:41 AM
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