すぐに死んじゃうってわかってても
かわいそうだからダメ、と言われても
どうしてもやりたい夏祭りの金魚すくい
するする泳ぐ宝石みたいにキレイな金魚たち
そっと水に着けた白い和紙はすぐに破れて
前歯の抜けたお兄さんが
乱暴にお椀ですくってくれた
ビニール袋の中の赤い金魚
手に入れた瞬間から興味を失う
無責任な子供心
団地住まいの家に水槽なんかあるわけない
使っていない花瓶に金魚を入れてみたけど
狭くて見るからに苦しそう
じわじわと後悔の念が湧いて
罪もない金魚の存在を恨めしく感じる
身勝手な子供心
水面に口をぱくぱくとさせる金魚から漂う生気
ここにいるよ、くるしいよ、たすけて
そんな言葉が聞こえてきそうで
怖くて怖くてしかたない
水槽の水はすぐに濁って生臭いが鼻をつく
美しい赤い背びれも尾びれもみるみる力を失い
ゆらゆらたよりなくゆらめく
ああ、もう見たくないと見て見ぬふりをする
あっという間に金魚から生気が消えて
腹を上にしてぷかぷかと浮かんだ
だからダメっていったのにー、と
花瓶を片づける母からお小言をもらいながらも
もう見なくていいんだ、と心底ほっとする
残酷な子供心
ドライフラワーが好きです
じつは生花の花束があまり得意じゃない
花束を頂いて、ありがとうと言ったその瞬間から
美しい花々が日々しおれて、枯れていって
ついにはゴミになって捨てる日を想像してしまうから
ドライフラワーには生気がなくて
単なるモノとして見れるのだけど
花瓶の中の生花は水をぐいぐい吸いながら
生々しく生きている気がして
みてみてここですよーって
しおれちゃうからなんとかしてーって
はげしく主張してる気がして怖い
あの夏祭りの花瓶の中の金魚たちを
思い出すのです
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